DeFiの概念自体は決して新しいものではないものの、2020年にエコシステムの急激な成長により、その概念が認知されるようになったのは、ここ1年のことです。DeFiの関連メディアも、DeFi Pulseを筆頭に、DeBankやDappRaderなど複数登場しました。DeFiのエコシステム拡大を図る重要な指標として、Total Locked Value (TVL)という数字があります。TVLについては、別コラムでその考え方や重要性、課題について詳述しますが、一般的に認識される考え方としては「DeFiアプリケーションの米ドルベースの預かり資産」となります。
「米ドルベース」というのが重要な点で、昨年来のDeFiブームにも押され暗号資産の米ドルベースの時価総額が総合的に伸びている点にもきちんと留意することで、数字をより正確に理解する上でも役に立ちます。いずれにせよ、こちらは改めて寄稿するのでそちらをお待ちいただきたく思います。
さて、上述のDeFi Pulseによると、2019年末時点でDeFi市場全体のTVLは7億米ドル(800億円弱)でした。これが、2020年9月に100億米ドル(約1兆1,000億円)を超え、4月現在で500億米ドル(約5兆5,000億円)に達しています。この数字からも、1年余りで爆発的な成長を遂げていることがわかります。
一方で今年3月末時点のPoSの市場規模は4,500億米ドル(約50兆円)で、ステーキングを行うことでロックされている資産は、約1,300億米ドル(約14兆円)です。2020年8月に、「ステーキングされる資産の価値は、向こう5年で1,000億米ドルを超える可能性がある」と予期されていましたが、ETH、ADA、DOTといった時価総額上位の資産のステーキング対応開始を受け、ステーキング市場も同時に大きな勃興を迎え、1年足らずでこの数字を超えることとなりました。
従来の PoSステーキングでは、ユーザーはあらかじめ決められた時間の間、資産がロックされています。場合によっては、資産がユーザーウォレットに返却されるまで、ユーザーはステーキングされない期間を含め待たなければならない期間が存在します。この時、資産の流動性はなくなります。ステーキングの認知度の向上と対応する暗号資産の増加により、ステーキングというブロックチェーンの働きや分散化への貢献、そしてそれによる報酬(Rewards)の受け取りが可能になりました。しかし、暗号資産の保有者は、PoS報酬のイールドメカニズムが組み込まれていなかったり、報酬が魅力的でなかったり、あるいは継続的な取引の方がより魅力的ではないかといったジレンマを抱えることになります。
DeFiは、すでに流動性プールやレンディング・プロトコルを作ることで、ユーザーにインセンティブを与えることに成功しており、中央集権型のプラットフォームのように、あるいは時にそれを上回るユーザー体験を提供しています。
Muse.Financeは、この考え方を、別のタイプのイールドを生み出すアセット、PoSブロックチェーンによって提供されるブロックチェーン報酬に拡張させたものです。ステーキング報酬は通常、ステーキングされたトークンの数に応じて一定の利率で固定されています。これにより、トークン保有者にとっては安定したイールドが得られ、またトークン価格が上昇した際にはその恩恵を享受することができます。以下、簡単にMuse.Financeを説明いたします。
<Muse.Financeとは>
Muse.Financeは、今般、Concept Paperをウェブ上に発表しました(https://muses.finance/)。その中に、Muse.Financeの構想プロダクトについて説明を記してあります。詳しくはConcept Paperを一読いただきたいですが、ここに短くその中身を記載します。
Muse.Finance は 非ERC-20のアセットを ERC-20 のエコシステムにリンクさせ、Cosmos, IRISnet, Cardano などのプラットフォーム上のアセットの所有者がレンディング、リクイディティ・マイニング、イールドファーミングに参加できるようにしていきます。これにより、ステークキングサービスプロバイダーにも利益をもたらし、より多くの収益ラインを生み出すことが期待されます。
Muse.Financeは、iTokenと呼ばれるリクイディティ・トークン(Muse.Financeによる開発)を発行し、DEXとのプールを構築することで、ユーザーは、mATOM、mADA、mIRISなどのイールドを生み出すラップアセットを取得することができ、Muse.Financeのプラットフォームを利用してイールドファーミングを行うことができるようになります。
そのために、我々はイーサリアム・ネットワークと他のネットワークとのブリッジを作り、そして各ネットワークでATOM、ADA、IRISなどをステーキングするユーザーが登録したイーサリアム・アドレスに対して、イーサリアムネットワークでラップされたトークン(ERC-20トークン)を発行します。
具体的にCosmosネットワークの例にして見てみると、イーサリアム・ネットワークでATOMからmATOMへの変換をサポートするために、トークンのデポジット/リディーム・ロジック(ETHスマートコントラクトとCardanoリレーヤ―)を扱うリレイヤーとブリッジモジュールを構築する。これにより、ユーザーはCardanoネットワークのADAからイーサリアムネットワークのmADAに変換することが可能になります。
mADA保有者は、mADAの保有額と保有期間に比例した報酬を受け取ることができます。報酬はmADAで支払われ、このシステムにより、ユーザーはほぼ遅滞なくいつでもmADAをリディームすることができるようになります。
注:Muse.FinanceのConcept Paperには免責事項が記されており、上記内容につきましても同様の免責事項を適応させていただきます。